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スケアクロウのYYamadaのレビュー・感想・評価

スケアクロウ(1973年製作の映画)
3.6
【戴冠!カンヌ映画祭パルムドール】
【ロードムービーのススメ】
 ~旅を通じて人生を紡ぐ~

◆旅の目的
 家族との再開、新事業の開業
◆旅の工程
 南カリフォルニア→デンバー→
 デトロイト→ピッツバーグ

〈見処〉
案山子はカラスを怖がらせていると思うかい?
ところが違うんだ。カラスは案山子を笑ってるのさ!
カラスは農夫が面白いことをして笑わせてくれるから『この畑を狙うのはよそう』と、他の畑へ行くのさ!

①友情を描く、70'sニューシネマの名作
・『スケアクロウ』は、レジェンド俳優、ジーン・ハックマンとアル・パチーノの2人が主演を務める1973年公開のアメリカンニューシネマ作品。
・『Scarecrow』は、日本語にて「カラスを脅かす」=「案山子かかし」を意味する。
・舞台は、冬空の南カリフォルニア。暴行傷害の罪で服役し、6年間の刑期を終えたばかりのマックス(ジーン・ハックマン)と5年越しの船乗り生活から足を洗ったライオン(アル・パチーノ)が出会うところから物語は始まる。
・マックスは洗車業を始めるためにピッツバーグへ、ライオンは一度も会ったことのない自分の子どもに会うためにデトロイトへ向かう途中にあった。
・喧嘩っ早く、どこか神経質なマックス。陽気で人なつっこいライオン。正反対の二人がふとしたきっかけで意気投合し、道中を共にしていくことになる…
・本作は、正反対の人格を有する二人の男が次第に友情を深めていく過程を描いたロードムービー。旅を共にするにつれ、二人の心境に変化が見られる。
・マックスは終盤に立ち寄ったバーで、またも喧嘩沙汰になりそうな場面グッと抑え、人を笑わせる行動に出る。
・逆に、陽気な性格のライオンは、次第に内省的な側面を見せてくる。二人の立ち位置の変化を感じながら、鑑賞したい作品であった。

②快進撃!レジェンド俳優の共演。
・本作が公開された1973年は、ジーン・ハックマンは43歳、アル・パチーノ33歳。俳優として快進撃を続けている最中の時期にあたる。
・ハックマンは『フレンチ・コネクション』(1971)でアカデミー主演男優賞。本作では、第26回カンヌ国際映画祭でパルム・ドール(最高作品賞)を受賞。続く『カンバセーション…盗聴…』(1974)でも第27回カンヌ国際映画祭のグランプリを獲得。向かうところ敵なしのトップ俳優であった。
・一方のアル・パチーノは、『ゴッドファーザー』(1972)にて一躍スターに。翌1973年は、本作と『セルピコ』。続く『ゴッドファーザー PART II』(1974)と、『狼たちの午後』(1975)まで、図らずも受賞には至らなかったが、1972年から1975年にかけて、4年連続でアカデミーノミネート。その人気と実力で世界を席巻していた時期であった。
・旧作鑑賞の際は、出演俳優の当時のキャリアを把握を理解しておくと、より興味深く鑑賞出来ると思う。

③結び…本作の見処は?
○: 他では見られない乱暴者のハックマンと陽気で人なつっこいパチーノによる友情物語
○: ハックマンによるストリップシーン、終盤の錯乱したパチーノの熱演は見物。
▲: 余韻を残す狙いなのだろうが、あまりにも、あっけないラストにびっくり。
▲: 退廃的なアメリカン・ニューシネマの作風からドラマチックな場面はなく、純粋なハッピーエンドでは終わらず、ハマらない人も多いのでは?自分は、二人の友情の力強さを感じることが出来ず、皆さんの高いレビュースコアまで、本作を高評価出来ませんでした。
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