CANACO

スケアクロウのCANACOのネタバレレビュー・内容・結末

スケアクロウ(1973年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

1973年公開のジェリー・シャッツバーグ監督作品。パルム・ドール受賞。ジーン・ハックマンとアル・パチーノのW主演。

アル・パチーノ好きの人から勧められて観た作品のひとつで2度目の鑑賞。ジーン・ハックマンは当時43歳くらいで、アル・パチーノは当時33歳くらい。本作は『ゴッドファーザー』の翌年に公開されている。

単にスケアクロウ=案山子だと思っていたけど、ぼろぼろの服を着た人、見すぼらしい人という意味もあり、おそらく掛けている。

猜疑心が強く、短気で喧嘩っ早いマックスは、暴行傷害の罪で6年の刑期を終え退所。冗談が好きな、人懐っこいライオン(ライアン)は5年間の船乗り生活を終えたばかり。マックスは洗車屋を始めるためピッツバーグへ、ライオンは(勝手に家を出ていったため)妻とまだ見ていない子どもに会いに、プレゼント片手にデトロイトへ向かっている。
どちらもヒッチハイクをしていたことを機に意気投合し、マックスは一緒に洗車屋をやろうとライオンをスカウトする。その2人が途中、さまざまな出来事に遭遇しながら目的地に向かう物語。

性格、考え方が違う2人が行動を共にする王道のロードムービー。トーンは決して明るくなく困難が多い。自ら人生を棒に振りやすい“短気・暴力的”な資質を持つマックスと、「うまくいく人の考え方」を地でいく人柄でありながら、(同行しているのがマックスであることも含め)災難が降りかかるライオンを見ると、人生って簡単じゃないなとあらためて思う。

「案山子は美しい、それは笑うことを覚えたからだ」、ライオンはそう言う。困難や災難を冗談にして笑える気品と機転をもったライオンが迎えるラストは辛く、苦しい。困難の先にハッピーがある物語ではない。
マックスがライオンのメソッドを会得し、“厚着ストリップショー”を演じるシーンが陽のクライマックスだとしたら、ライオンが錯乱する噴水から病院までのシーンは陰のクライマックスで涙が滲む。

劇中では明示していないが、それでもこの2人は最終的に洗車屋をやるのだろうなと思わせる作品。私はロードムービーの代表作を聞かれたら、本作は必ず挙げたい。
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