wayfarer

スケアクロウのwayfarerのレビュー・感想・評価

スケアクロウ(1973年製作の映画)
3.0
午前十時の映画祭で「スケアクロウ」を見ました。

刑務所を出所したばかりの短気で他人に気を許さない大男(ジーン・ハックマン)と、おどけて人を笑わせて争いを回避してきた小柄な男(アル・パチーノ)という、対照的な二人が出会い、ヒッチハイクの旅を共にするロードムービーです。なにか主軸となるドラマがあるわけではなく、旅の途中での出来事を通して、二人が互いに影響し合い、友情を深めていく様子が描かれます。

タイトルの「スケアクロウ」とは、ネットで調べると「案山子、みすぼらしい人、痩せ衰えた人」という意味だそうです。映画の中では、自分たちを案山子に喩えているのでしょうが、(カラスを脅かして追い払うのではなく)「カラスを笑わせて田んぼを守る案山子」と、ユーモアを交えてなのか、自らを卑下しているのか、そのような説明がなされます。

上に書いたようにドラマチックではなく、むしろ起伏が乏しい映画です。この映画では、社会の底辺で生きる不器用な二人の男が、酒を飲んで笑ったり暴力沙汰を起こしたり、人生の不条理さや世の中の残酷さに無様に打ちのめされたり、そんな等身大の生き様が描かれています。この映画の魅力は、そんな姿に自らを重ねて共感する、感じ入る・・そういうことなのだろうと思います。

(本当に起伏が乏しい内容なので、正直、ビデオではつらくて途中で見るのをやめてしまったと思います。映画館だから最後まで見続けられたのだと思います)

それにしても、ジーン・ハックマンは相変わらず上手いし、若い頃のアル・パチーノはひとつひとつの表情が魅力的でした。
wayfarer

wayfarer