半兵衛

丹下左膳 乾雲坤竜の巻の半兵衛のレビュー・感想・評価

丹下左膳 乾雲坤竜の巻(1962年製作の映画)
3.8
加藤泰は山中貞雄の甥であることで有名だが、そんな加藤がチャンバラ映画のビッグタイトルと言える『丹下左膳』を山中ではなく敢えて伊藤大輔リスペクトで撮っているのが興味深い。

正義や悪という概念が無く欲望のままに生きる登場人物たち、妖刀をめぐる様々な人間の思惑が精緻な描写で手を抜かずきちんと描かれているため、テンポ良くドラマをさばく加藤泰の演出力も相まって丹下左膳の原点である『新版大岡政談』を彷彿とさせつつ60年代の時代劇として新たに仕立て直した結果超一級のチャンバラ映画に仕上がっている。そして薄汚れた丹下の住む家など、細かいところまでこだわった美術も見所。

それまでの明朗なキャラクターを捨てたアナーキーな丹下像を見事に演じた大友柳太朗をはじめとする役者たちの熱演も素晴らしい。個人的には欲望につっきる登場人物のなかでクールに生きる山茶花究の存在が◎。
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