半兵衛

女必殺五段拳の半兵衛のレビュー・感想・評価

女必殺五段拳(1976年製作の映画)
3.1
なんだろう今までの『女必殺拳』シリーズにあったアクション映画としての雰囲気からガラッと変わって、アイドル映画みたいな作風になってしまっているな(同じ東映でいえば美空ひばり作品に近い雰囲気)。等身大の女の子を伸び伸びと演じる悦っちゃんも悪くないけれど、そのスタイルが時代に逆行している感じがあるので大作化する前の映画界のあえぎが見えて少し切なくなる。

肝心の悦っちゃんのアクションがそれほど無いのが物足りないが、ラストの撮影所での大暴れで一気にその分を取り戻してくれる。あとサブヒロインのミッチー・ラブ(『ジャッカー電撃隊』のヒロイン)もアクションが巧いのでダブルヒロインによる迫力あるアクションという邦画では中々見られない豪華な味わいが楽しめるのが嬉しい。

そして東映京都撮影所を悪のアジトにしてしまうという大胆不敵な発想が素晴らしく、ラストの撮影所で展開する格闘シーンは主役たちのアクションだけでなく、撮影所の内部がどうなっているかどうスタッフや役者が動いているかも堪能できるのでファンにとっては二重の意味で楽しい。冒頭時代劇で刀を振って物が切断されるシーンが、実際はどうやって撮影されているのかを詳細に描いているのが面白い。

ただ80分近い短さにも関わらずドラマパートが薄いためアクションやダンス、回想シーンなどで水増ししているので途中飽きてくるのが残念。特に脇役の沖縄人兄妹の回想も子供時代のひもじい話をくどいくらい流すので見ている方がしんどくなる、その直前の兄妹の展開で上田正樹の歌がかかるシーンがカッコ良かったのでそこで終わらせておけば良かったのに。

それでも男装や着物スタイルなど今までにない格好をする悦っちゃん、工夫されたアクションシーン、東映京都の脇役たちの活躍(特に福本清三や片桐竜次)が楽しく、見終わったあとそれなりに満足感はある。あと後年二時間ドラマではまり役とする刑事役をギラギラした目付きで演じる渡瀬恒彦も見所だけど、肝心のアクションで習っていた空手を使わず後半何故か日本刀を使うのはやはり恥ずかしかったからか?

あと志穂美悦子主演のはずなのに渡瀬恒彦メインで終わるエンディングに違和感が残る。
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