ばーとん

やわらかい手のばーとんのレビュー・感想・評価

やわらかい手(2007年製作の映画)
4.2
邦題がいい。この映画で「やわらかい手」は直球の下ネタなのに、ハートフルな印象でミスリードしてる感じが面白い。中盤まではマリアンヌ・フェイスフルのお婆ちゃんっぽさが、いくらなんでもナシだよなーって思ってたが、終盤頃には、アリなように思えてくるから不思議。女性の風俗堕ちの物語は、悲劇的な結末に至るものと相場が決まってるんだけど(溝口の時代からの伝統だ)この映画の楽天性はかなり珍しい。夜の商売を否定的に描かないで、困った時のセーフティーネットとして機能してるよね、とあるがままに捉えている。

ハンドジョブの仕事始めたはいいが、上手な嘘がつけず、周囲にバレて、息子に怒られ、友人に絶縁される、など一応悲劇的な展開にはなってる。でもさして葛藤するでもなく、大金を稼ぎ、ちゃっかり恋人までゲットする。不器用なんだかしたたかなんだかよく分からない人だけど、孫を助けるって目的はちゃんと達成してるし、このオバサンは強い。オバサンと一緒に映画も飄々と悲劇を乗り越えていく。大きな目標を叶えるためには、何かを犠牲にすることもあるだろうが、決して気に病むことはない、というポジティビティが清々しい。手だけじゃなく心がやわらかいってことなんだろう。
ばーとん

ばーとん