taka

天空の草原のナンサのtakaのレビュー・感想・評価

天空の草原のナンサ(2005年製作の映画)
3.9
確かに天空、雲が低い

モンゴル出身の女性監督がドイツで映画を学び、ドイツ人スタッフらと制作した作品

ゲル(移動式住居)で暮らす遊牧民一家
ナンサはそこの長女で三姉妹?と思ったら一番下は男の子
ある一家が抜擢されそのまま家族を演じている
台詞は少なく家畜の解体、チーズ作り、ゲルの解体と移動など、全てがドキュメンタリーのような作り

ゲル内部の装飾は意外とカラフルで仏教的紋様の家具やダライ・ラマの肖像も
民族衣装も独特な色使いで可愛い
話の軸には"輪廻転生"があり、モンゴルで語り継がれる「黄色い犬の伝説」が元に

ナンサの初仕事、牛のウンチ拾いはまるでモンゴル版「はじめてのおつかい」
岩場で仔犬を拾い"ツォーホル"と名付けるが・・
そのわんこがブラックメタルのメイクの様な模様でカワイイ!
仔犬と子供たちのじゃれ合いがたまらんw
他の動物の牛や馬もありのまま姿で、特に羊たちの可愛い鳴き声とは裏腹の無表情さは一体何を考えてるのか気になるw


日常は一見長閑だが実際は過酷であるのは間違いない
今作の季節は夏〜秋、当然酷寒の冬がやってくるし、新学期にはナンサは町の学校へ戻る

そんなゲル生活も近代化が進むがプラスチックの小物やオモチャが異物に見えるから不思議
民族衣装とバイクのアンバランスさとすれ違う選挙カーもシュールだけど、ゲルと町までの距離、国と遊牧民一家の距離を感じさせる
遊牧民は存亡の危機にあるというが、自然と共存する理に適った遊牧生活自体は無くならないと信じたい
加速する気候変動も深刻であるが・・

360度見渡す限り草原と山
サラウンドな自然音がリアルで大きめの音での鑑賞がおすすめ
ホーミーなどのガチな民族音楽は流れない代わり、母親らが歌う生活に根付いた曲や伝統楽器を用いたシンプルな劇伴が大変美しい


撮影後、わんこはそのまま一家に引き取られたようでほっこり
taka

taka