鋼鉄隊長

D-WARS ディー・ウォーズの鋼鉄隊長のレビュー・感想・評価

D-WARS ディー・ウォーズ(2007年製作の映画)
3.0
購入したDVDで鑑賞。

【あらすじ】
ロサンゼルス郊外で陥没事故発生。それは500年前の韓国に伝わる伝説の大蛇(イムギ)復活の始まりであった。

 韓国は怪獣映画が豊富だ。『グエムル-漢江の怪物-』(2006)以外はあまり知られていないが、マニアックな良作が中々多い。そんな韓国を代表する怪獣映画監督が、シム・ヒョンレである。『怪獣大決戦ヤンガリー』(1999)などで有名な方だ。彼の十八番は国策映画! 国の支援の下、国家ブランド向上のために映画を撮り続けた。怪獣映画で世界にアピールするとは素晴らしい!! しかし今回の作品は歴史の闇に埋もれてしまった。
 それは何故か。つまらなかったからだ。アメリカでは「エド・ウッドに大金とCGを与えたら出来る映画」と酷評された。国の威信をかけたが故に行われた過度な宣伝も災いし、「Don't see D-WARS」運動まで起きた。確かに心底つまらない。何でも「天命」で誤魔化す超ご都合主義な脚本。大蛇が出ても逃げ惑う市民が全然いないショボい映像。突然登場した悪役FBI捜査官等々、ダメな点は枚挙にいとまがない。
 だがしかし、腐っても国策怪獣映画。見せ場の迫力はB級の比では無い。終盤のロサンゼルス市街戦は最高に盛り上がる。縦横無尽に飛び交って戦うヘリ対ドラゴンを追いかける長回しカットは、『地獄の黙示録』(1979)ワルキューレの騎行襲撃の次に好きなヘリ戦闘シーンだ。単機でドラゴンを追い詰めるも、ビルの谷間で見失う。ふと見上げるとビルの壁には怪獣がびっしり潜んでおり……。緊張と緩和の塩梅が絶妙ではないか! 勇猛果敢に戦い1機、また1機と散っていくヘリ部隊の雄姿は、涙なしには観られない。しかもそれだけではない。最後は大蛇2体による怪獣大決戦だ!! 互いに絡みつき死闘を繰り広げる大怪獣たち。これだけで2時間は観ていられる。やはり怪獣映画は戦ってなんぼだ。
 せっかく市街戦からは調子が出てくるのに、酷評の嵐でかき消された悲劇の映画(本当は日本でも大々的に公開するはずだったのに。残念!)。度し難いほどに最悪な前半のドラマを堪えてこそ、最終決戦が光り輝く。この爆発力は他にはない。韓国特撮の隠れた良作、『D-WARS』はカルト的人気があるに違いない。
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