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雪の喪章のmiraのレビュー・感想・評価

雪の喪章(1967年製作の映画)
5.0
若尾文子の見舞いにきた天知茂との会話のシーン、向きあって話していながらも視線を向けるたびにどちらかが伏せたり、なかなか視線があわない。でも、視線があった瞬間に内側から切り返すことで画面が躍動してすごくいい。浮気現場もさらっと着物を映すだけ、という慎ましさ。女中がお腹をさする→ハサミで草を切る→蛇がでてくる。ここ怖いけど、そのあとにカミソリで首のムダ毛(でいい?)を処理しようとして、思わず首をかき切ろうと思ってしまうサスペンス感、そこに蛇がでてきて……と反復しているし、後々、女将として出世した元女中の首元が綺麗になっているところも拾っていて説話的な充実感もある。落雪で子供が亡くなるシーン。ふつうの作家なら、アップかましそうだけど遠景からそっとことをのぞいているだけという慎ましさ。女中を見送ろうとするときに火事になるところ、雪と金箔がまっていてあまりにも美しい。美しいと思ってみていたら、若尾文子が「きれい」とつぶやいてしまうのが本当に素晴らしい。フィクション=映画(画面)を肯定することにグッときてしまう。天知茂が金持ちになって会うシーンで鍋のショットでつないでいるのがおもしろい。女中や雇っていた人と完全に地位が逆転しながらも、またさいごに雪が襲ってくるように、なにもかもが反転しながらゆっくりとそれは再来してくる。恐ろしいホラー映画ともいえる。
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