よしまる

恋のよしまるのレビュー・感想・評価

(1971年製作の映画)
4.0
 恋。

 なんてありふれたタイトルなんだろう!と思ってフィルマで検索してみれば「恋」と言う字を含んだ映画は数えきれず出てくるけれど、一文字で「恋」は他に邦画で2本しか見つけられなかった。先に取ったもん勝ち?

 まだ性を知らない12歳の男の子が、大人の女性に淡い恋心を抱く。これまたありふれたシチュエーションで、ラウラアントネッリの「青い体験」を筆頭に食傷気味では?とさえ思ったのも途中まで。ラストに向けての怒涛の展開が凄かった。
 「ラスト〇〇分、衝撃の…」みたいなキャッチコピーが付いても不思議ではないほどのクライマックス感。ハイスピードカメラのごとくインパクトある撮影に息を飲む。

 イギリスの大女優ジュリークリスティと「まぼろしの市街戦」のアランベイツ、これに絡むのがエドワードフォックスと英国の誇る名優が揃い、男の子の目を通して大人の男女の歪なロマンスを描く。
 そこに片田舎の貴族へのシニカルな視点を入れるのがイギリス流。淡々とした中にもそれぞれの胸中に去来する熱いモヤモヤがジンワリと伝わる不思議な魅力を持った映画だった。
 もちろん淡々とした描写もまたイギリスらしく、苦手な人は退屈に感じるかもしれない。

 そしてやはり特筆すべきはミシェルルグランのサントラ。切なくて哀しくて、でも甘美な香りと気高さを持った曲を作らせたら彼の右に出る者はいない、というのがここでもはっきりとわかる。

 「過去は異国である」という名フレーズが心に残る、少年のひと夏の経験を記したジュブナイルの傑作。まだまだ知らない映画がたくさんあって、出会う喜びは尽きないなぁ。