rage30

少年と自転車のrage30のネタバレレビュー・内容・結末

少年と自転車(2011年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

蒸発した父親を探す、少年の話。

映画の冒頭から画面内を駆けずり回る、主人公シリル。
その勢いや必死さから、シリルの切実さが痛いくらいに伝わってきた。
若干態度が悪い部分もあるのだが、彼の抱える不安や恐怖を考えれば、周りが見えなくなるのも仕方ない事だろう。
やっとの事で会えた父親と少しでも長く一緒にいようと、健気に振舞うところも胸を打つ。

しかし、残酷にも父親の答えは拒絶だった。

その後、シリルは町の不良少年と親しくなるのだが、この不良少年に父親代わりを求めてしまったのだろうか。
個人的には強さや悪さに憧れてしまう、マスキュリニティの問題も孕んでいる様に感じられた。

結局、シリルは不良少年にも裏切られ、里親の下へ。
2度も捨てられた事で、ようやく彼の中でも区切りが出来たのだろう。
父親に捨てられた少年から、父親を捨てた少年になる事で、シリルは主体的に人生を生きていく事が出来るのである。

ラスト、強盗の被害者から喧嘩を売られるシリル。
しかし、そこにはもう強さや悪さに憧れ、暴力を行使するシリルは存在しなかった。
そして、彼は文字通り、一回死んで生まれ変わるのである。
悪しき親子を残して進む先には、明るい未来が待ち受けている事だろう。
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