【1989年キネマ旬報日本映画ベストテン 第8位】
監督デビュー作にして高い評価を得た北野武作品。北野武って本当にいきなり映画に愛されちゃった人なんだな…
空間の使い方が抜群、まるで黒沢清映画を観ているような奇妙で秀逸な撮影が本当に素晴らしい。
タイトルの「その男」は最初は北野武演じる刑事かと思ったんだけど、話が進むにつれ清弘という殺し屋が浮かび上がってくる。
圧巻の追跡シーンは凄いし、後半の静的ながら見るに堪えない暴力描写、なによりたけしの無表情の中にある感情が映画的としか言いようがない演出で描かれていく。
一番恐ろしかったのは廃ビルで清弘が指をナイフで切りつける描写、派手な暴力シーンよりもよっぽど残酷で怖かった。
岸部一徳演じる仁藤の事務所があまりにがらんどうでそこは低予算感を感じなくもなかったかな。
最後、たけしは無表情なのに妹をみる顔が何ともいえない哀しさ、やるせなさを醸し出していた。一見不条理な終わりのようだけど、ああすることしかできなかったんだと思う。
北野武、凄すぎる。これが監督デビューなんて信じられない。