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その男、凶暴につきのhoshのレビュー・感想・評価

その男、凶暴につき(1989年製作の映画)
4.4
未見の北野映画を見る① 北野武伝説のデビュー作。暴力警官我妻と暴力団の抗争。

冒頭、間抜けな顔のホームレスに不良たちが缶を投げる所からこの映画は始まる。その次のシークエンス。無邪気な小学生の子供たちが橋の上から船の人に向けて缶を投げる。カツーン。という金属音。掛けていく子供たちの足音のリズムに合わせて鳴り響く奇妙な音楽。橋の向こうから歩いてくるのは我妻。完璧なリズム。

映画が始まってわずか10分の流れで、この作品が邪気に溢れた痛々しい暴力とえもいえぬユーモア、感覚的なリズムとポエムが共存したものだと分かる。なにより恐ろしいのは、この3つの要素は今後の北野映画に通底する唯一無二の魅力ということ。繰り返すけどこれデビュー作の冒頭10分くらいですよ。なんという才覚。

中盤のチェイスシーン、子供の目から暴力を映し出す強烈さ。後半の暗闇の中での銃撃戦の斬新さと痺れるような光と闇のコントラスト。救いがない壮絶な幕切れ。かと思えば、序盤の退院した妹と祭りに向かい、帰り道に海辺を眺める。みたいなポエムに満ちたショットもある。もうセンスがあるとしか言えない。北野武、これがデビュー作は映画に選ばれた人ですよ………天才。
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