ダイナ

その男、凶暴につきのダイナのレビュー・感想・評価

その男、凶暴につき(1989年製作の映画)
4.9
ホームレスをリンチした少年の家に押し入り過度な暴力で自白を強要するというパンチの効いた導入から主人公刑事の暴力性やアナーキーが伝わってきます。素っ頓狂かつ哀愁ある印象のテーマとジョークの応酬はブラックコメディな雰囲気をかもしつつも疑惑と暴力が増幅していく展開が息を詰まらせていく、血で血を洗う骨太なパワーゲームクライムサスペンス。弱肉強食という概念を通り越して「強い奴が気に入らない奴を喰う」。知人の知らなかった一面が見えた時愕然とする衝撃、この部分を本作は上手く映していて、登場人物だけでなく観客もその感覚に没入できるのが面白い所です。中弛みが無さすぎるのも流石。

バイオレンスシーンがてんこ盛りな本作。前半の階段つき落としや轢き脅し、連続ビンタ等
どこか笑いを誘われる部分もあり、後半の屋上、ロッカールーム、映画館からの帰り道での、カメラワークに視点の切り替え、痛めつけのプロセスまで見所たっぷり。対峙から蹂躙まで、立場・状況が目まぐるしく変わるスピード感ある展開が最高。殺戮趣味のサイコパスと暴力刑事の邂逅は興奮必至。階段ニアミス後からの相手が気狂いならこっちも手段選ばねーぞバカヤローな展開、引き返せない一線を軽々と踏み越えていってしまう2人に加速がついた暁にはもう目が離せない!中弛みなくクライマックスまで面白い、傑作としか言いようがない!

岸辺一徳、佐野史郎、平泉成、川上麻衣子、芦川誠、世界観を作り上げる脇役の演技も良かったです。北野作品常連の寺島進の本作での存在に気付いたときは笑ってしまった。そんな中でも白竜さん、あなたは最高だ!北野武の脂の乗った存在感に負けない威圧感、敵役として素晴らしい演技。原案・脚本が別の人といえど初監督作がこれってもう北野武天才としか言えねえよ…。(脚本はたけしの手も入ってるという話だそうですが)
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