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その男、凶暴につきのJunのレビュー・感想・評価

その男、凶暴につき(1989年製作の映画)
3.9
北野武、第一回監督作品。

警察と裏社会の交わり、麻薬を追う物語に特に意外性はないが、とにかく剥き出しの暴力に彩られた映像が魅力的である。緊張感を湛えたカメラワークは目を見張るものがあり、唐突に鳴る打撃や弾着の瞬間には思わず息を呑む。全編に渡って圧倒的な言葉の少なさも特徴の一つであるが、与える情報量が乏しいからこそ登場人物一人一人の個性や背景が色濃く映える。言うまでもないが、主演を兼ねる武を含め名優たち(ブレイク前のあの人や若き日のその人たちの姿が…!)の存在感があってこそ成り立つ作品だ。
主人公の我妻が妹と行動を共にしているときに見せる僅かな優しい表情に心惹かれる。それだけに呆気ないラストには切ない気持ちになる。
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