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その男、凶暴につきのjonajonaのレビュー・感想・評価

その男、凶暴につき(1989年製作の映画)
5.0
北野武初監督作品。
初めてにしてすでに神がかった
バイオレンス映画の傑作。

警察ながら、悪をぶっきらぼうな暴力で個人的に始末していく無法者の我妻(たけし)。そして麻薬の密売組織トップの実業家の男に忠誠を誓い、自身の判断で邪魔者を消してゆく殺し屋清宏(白竜)。
立場は違うが根っこが同じ二人が組織の中でつまはじきにされながら、自分が信じたものを変えることができずに暴走してゆき、やがてぶつかり合う様を描く。

全体的に静かな狂気がこの映画のとんでもない魅力を生み出してる気がするけど、カットや話の構成、キャラ、暴力描写全てがすさまじくて何が凄いのか逆によくわからない。多分全部すごい!(アホ)

冒頭とエンディングが他人に始まり他人に終わる感じも何ともいえず好きだし、あの祭り感のある犯人の長回し追跡シーンでも、街中で布団叩いてる奥さんが映り込んだりする間抜けさが素敵。
犯人が逃亡して刑事ともみ合いになるシーンではすぐそばで遊んでた少年の顔が映り込む。『あ、なんか変なことが始まる』という予感を感じて一人表情を失った瞬間。こういう一つ一つのディテールが社会とか世間、他人という存在を否が応でも意識させる反面、主人公たちは無法者と呼べる連中なのでルール無用で暴力を振るいあう。このギャップがなんともたまらない。

追記・冒頭の音楽が流れ出すまでの橋の上での一連のシークエンスも天才的にかっこいい。船に空き缶を投げ捨てて『バカヤロー!』と叫ぶワルガキたちと交代するように対面からやってくるたけし。彼がガキの延長線上から来たことがわかるし、音のタイミングがいちいち完璧だと思います。
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