続いて、カミッロ・ボイト(1836 –1914)の短編『1日に足らず Meno di un giorno 』(1883)。ボイトといえばヴィスコンティの『夏の嵐』(1954)の原作となった『官能』(Senso)の作者だが、同じ短編集『SENSO: NUOVE STORIELLE VANE』(1899)にに納められた小品。今からすればたわいものない昼メロなのだけれど、19世紀の後半においてはロマン派の理想主義やアカデミズムへの反逆であり、「よろめき」を奔放な生き方として称揚した文学運動「 蓬髪(ほうはつ)主義運動 scapigliatura 」の代表的なもの。
そこでベテランのブラゼッティが打ち出したのがこの「雑記帳 Zibaldone」というスタイル。プロデューサから『Altri tempi (今とは別の時代)』をメインタイトルにされたとはいえ、この映画はまさに「雑記帳」。あれやこれやのアイデアを19世紀後半アラ20世紀の初めにかけての作家たちの、それぞれに特徴的な作品を9つ集めてくると、それを2時間の映画のなかに放り込んでみせてくれたわけだ。