み

おくりびとのみのネタバレレビュー・内容・結末

おくりびと(2008年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

授業の課題で鑑賞 

「なんか切ないですよねぇ。死ぬためにのぼるなんて。どうせ死ぬならなにもあんなに苦労しなくても」
映画の前半で川をのぼる鮭達を見た主人公の一言。たしかに、生き物は皆死から逃れることは出来ない。日々の生活の積み重ねの先には、必ず終わりが待っている。
だけど、死という結末から逃れられないからと言って自暴自棄に生きるのは生命に対して誠実じゃないんだな。ストーリーが進むにつれて主人公の人生観の変化が見てとれる。

あと、命をいただきながら生きてるんだなって、当たり前と思っててもよく考えるとやっぱりすごいことだ。ふぐの白子、フライドチキン、これらもご遺体。「生き物が生き物食って生きてる、だろ」「死ぬ気になれなきゃ食うしかない。食うならうまい方がいい」
人生も、どうせ生きるならきっと楽しんだ方がいい。

納棺師の職を忌み嫌う人々を見て、人間は死をいかに見ないふりをしてるのかまざまざと感じた。
昔はお葬式全部家でやっていたなんて驚きだ。資本主義社会の中で分業が進み、人はうまいこと死を生活から遠ざけたんだろうか。しかしきっと、生活が便利になり、社会から身体性が排除され、死が生活から遠ざかるほどに死への恐怖は漠然と増してゆく。
実際、この映画のお葬式の場面を見ながら死ってグロテスクだなと思ってしまった自分がいる。さっきまで生きていた人が、死んだ瞬間動かない物体になるってやっぱり悲しい。お葬式のシーン見てられなくて中断しながら観た。演出泣かせにきてるよなぁと思いながらも泣いてしまう。

日本人の死生観が海外では当たり前じゃないんだよなって思うと不思議な気持ち。

山がきれいだった。自然が綺麗。自然の雄大さを前にすると、人の死に関するあれこれがなんだか不思議と違った風に見えてくる。死をただそこにあるものとして受け入れる動物たちと死に戸惑いながら泣き悲しんで故人を送り出す人間の対比?
主人公が老婆の腐敗した死体を見た後妻の体を求める場面になんか生きてるって感じだなぁと思った

妻の名前:美香=美しい香り→decay(腐敗)との対比
主人公の名前:大吾→仏法での悟り
を表してるんじゃないかって考察面白い

燃やされる母親の遺骸にかける言葉が謝罪なんて嫌。親孝行しないと。

思いついたことをだらだらと書き連ねてしまった。総じて、今の私にはヘビーな内容だったけど、日々の生活を慈しみたくなった&死は忌み嫌うべきものではないと思わせてもらえた映画だった。しばらくは見たくないけどいつかまた見返すんだと思う。
み