さゆ

おくりびとのさゆのネタバレレビュー・内容・結末

おくりびと(2008年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

シンプルな仕上がりのドラマ。

私は大事な人の死を経験した時に初めて納棺師の仕事を見た。とても綺麗にお化粧を施してくれて、感謝でいっぱいの気持ちになったのを思い出した。
しかしきちんと納棺師にお礼を言っただろうか。末席に居たので必ずしも口にする必要はなく、両親が色々と会話をしてくれていたはずだ。しかしもっと敬意を示すべきだったなと今更考えた。

ここに出てくる人達は今まで死に関わる職業の方と一切接したことがないんだろうかと疑問を感じる。主人公は妻に頑なに仕事内容を明かさないし、妻は絶対子供がいじめられるとか言うし、田舎のおっさんおばさんは面と向かって職業差別するし、なんなんだこいつら。

でもそれはこの作品をとりまく「エネルギーの希薄さ」を構成する大事な一要素だ。
他にも諦め、後悔、蔑み、人口の減った田舎町など、何だかキュッと苦しくなるようなエッセンスが度々出てくる。

主人公は偶然出会った納棺師の仕事に共感する。
嫌なことを言われても感謝を述べられても
常に変わらず透明な表情で仕事に従事する。
骨付き肉を食べられるようになるシーンを見ていて、すごく良い職業ドラマだなと思った。

予定調和が多く、個人的に物足りなさがあったためこの評価にしている。
それでも、産まれてくる生命にほのかな希望を感じさせる終わり方は様式美的な美しさがあった。
居住まいが正される作品だった。
さゆ

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