イルーナ

怪物の花嫁のイルーナのレビュー・感想・評価

怪物の花嫁(1955年製作の映画)
1.8
エド・ウッドの代表作の真ん中で、常連の一人トー・ジョンソン初登場作。
それぞれ違った形のベクトルで吹っ切れた最低ぶりを発揮していた『グレンとグレンダ』と『プラン9・フロム・アウタースペース』とは違い、(あくまでエドの作品としては)意外にも手堅い仕上がり。
あまりにも取っ散らかってイミフだった上記2作と比べても話はシンプルだし。
……しかしそのために、どうにも印象が薄くなりがち。
私も昔エド・ウッドにハマった頃『グレンとグレンダ』と『プラン9』は何度も観たけど、これは一度しか観なかったです。
記録映像のツギハギにダラダラした会話、仕事しないカメラワーク、巨大タコの人形にモーターがなかったので、動かないタコの前で襲われる演技をする俳優たちと、相変わらずのエド・ウッドクオリティなんですけどね。
それでも、ルゴシの存在感は別格。
独白シーンは彼の波乱万丈の人生を感じさせる重みがある。
……逆に言えば、見どころらしい見どころがマジでそれくらいしかないのですが。

それより、制作の裏側の方がよっぽど面白い。というか涙なしには見られない。
ルゴシの伝記作家曰く、
「いくらか金が集まると、それでフィルムを何巻か買い、ルゴシにギャラを払ってモルヒネを買えるようにしてやり、その上で数日だけ撮影する。すると金がなくなる。撮影を中断して金集めに飛び回る。すべてがこんな調子だった。だから映画が完成する頃には誰にどれだけの金を払わなければならないのか、まるで判らなくなっていた」
とにかくエドは計画性がなく、行き当たりばったりに行動するタイプだったらしい。
また、主役はスポンサーの肉屋の息子で、基本的に撮り直しをしないエドでさえ17回も撮り直ししたという超絶大根役者。
さらにルゴシの自殺につき合わされそうになったため、心の支えとなるべく、こんな状況でも映画を撮り続けた。
落ちぶれて死を願うほど思いつめていたルゴシを本気で救おうとしていたのは、エドだけだった……
こうしたエピソードを聞くと、がぜん憎めなくなってくるのもまた、エド・ウッドクオリティですね。
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