よしまる

リリーのよしまるのレビュー・感想・評価

リリー(1953年製作の映画)
3.6
 友人とのオンライン上映会のお題にて。実は決まっていたタイトルが見放題終了になってしまい、第二候補の繰り上げ当選。

 先日「オードリーヘプバーン」を観て、金ローで「ローマの休日」を観て、そのすぐ後にこの同じ年に公開されたメルファーラーの映画を観ることになるとは何たる偶然。
 しかもこの作品でアカデミー主演女優賞にノミネートされたレスリーキャロンは、「ロマ休」の大型新人オードリーに敗れている。さらにオードリーは翌年、メルファーラーと結婚。
 そんな因縁のある作品を繰り上げで2日連続で観ることになるなんて…、ここまでどうでもいい話ww

 さて、当時20歳を越えていたレスリーキャロンが田舎から出てきた16歳の家なき子を演じた、コンパクトなミュージカルの良品。2人暮らしの父を亡くし食べ物も住む家もないキャロンは、サーカスのマジシャンに惚れてついていくことに。

 ところがそのマジシャンはパートナーの女性と仲が良く、キャロンの出番はない。 
 そんなキャロンを見守るのが人形使いのメルファーラー。4人の人形を異なる声色を駆使して操り、キャロンの塞いだ心を溶かしてゆく。

 まだ世間知らずで本当の愛を知らない娘と、人形とを通してしか自分の気持ちを伝えられないコミュ障気味の男。
 ふたりは人形劇と歌により心を通わせるのだけれど、そううまくは結ばれない。

 そんなジレンマが面白くもあり、じれったくもあり。最後はミュージカル映画らしく、空想上のダンスによって展開していくのはステキだった。

 ただ、尺が短いこともあるのか、結末にいたるまでの互いの心の動き、想いが揺さぶられていく過程が描かれず、なんとなくダンスで誤魔化されてしまったように感じた。

 それがミュージカルというものなのかもしれないのだけれど、結ばれぬ恋が成就するというドラマティックさに乏しくて物足りない感が残ってしまった。

 あれもこれもが大作で大げさである必要もないので、これはこれで楽しめたし、途中で挿入される大人になったキャロンのダンスシーンが美しく、まだ知らない素敵な女優さんがたくさんいるんだなぁと、それを知れたのも良かったことのひとつ。いつもながら友人たちに感謝。