わたがし

ルイスと未来泥棒のわたがしのレビュー・感想・評価

ルイスと未来泥棒(2007年製作の映画)
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 子供の頃に劇場で観て大好きだった1本。ようやく3Dブルーレイでちゃんとした形で観直すことができて感動。今観てもちゃんといい映画でところどころボロボロ泣いた。
 ジョン・ラセターがほぼ完成状態のものを半分以上作り直したって話だけど、若干その「急いで作り直した感」がある。明らかにもっと軽めのスラップスティックコメディをやろうとしていた感。テーマの押し付けがましさが下品だけど、フルスイング直球ウォルト・ディズニーリスペクト(クリエイター賛歌)で素直に泣いてしまう。
 主人公が結構ちゃんとクズで、たった1回のミスで人生を台無しにしてしまった人間に平気で「過去ばっか見ずに前を見ろよ」とか言い、それが正しいとされている作風がモロ『トゥモローランド』なんだけど、よくよく考えるとプロットも妙に似ている点が多くて何らかの接点があったのかもしれない。当時のジョン・ラセターが後の『トゥモローランド』になるあの企画書の存在を知っててもおかしくないだろうし。
 人としての正しさとクリエイターとしての正しさは常に拮抗するし、どう折り合いをつけていくかというのは才能に恵まれれば恵まれるほど、目の前の仕事に熱中すればするほど日々考えてしまうんだろう。世の中、持たざる者の折り合いの付け方の話ばかりがもてはやされ、持つ者の決着はどうなってるんだ。自分もいつかそういうストーリーを語りたいですね
 3Dは演出とイマイチ噛み合ってないし、随所にあるコンバートショットのクオリティが死ぬほど低いけど、全体的にクラクラするほど視差が強烈でなかなかない3D体験。ペラペラギャグ漫画ノリで動き回るキャラクターや乗り物が強い視差で空間に投げ込まれることで、ギリギリちゃんとドラマとして観れるようになっていると思う。恐らく2Dで観たらもっと軽い作風の印象に見えるはず。タイムマシンの浮遊感、ディストピア世界のディティールに飲み込まれる感覚は、さして強い感情のないシーンでもドキドキワクワクが止まらない。正しい映画体験。
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