事件の目撃者となり謎の人物に恐喝される貧乏な夫婦役に木村功&津島恵子というキャスティングがドンピシャで、見えない敵に怯え警察に告げるか告げないか狼狽する彼らのドラマがより切実に伝わってくる。
主人公が修理するラジオや近くを走る電車など音を効果的に使った演出により小市民スリラーを繊細に盛り上げていく鈴木英夫監督の手腕は見事だし、モノクロによる光と陰が効いたサスペンス演出もスリリング。でもそうしたサスペンスで作品を破壊するまで弾けることはせず全体的にそつなくまとめている感じなので、映画のパワーがそこそこになり観賞後物足りない感触が残るのが残念だったりもする。もっともプログラムピクチャーである以上破綻より定番や予定調和を求めるのが当然ではあるけど。
終盤の時計の針の音を心臓の音のように表現する演出はイイね。