「黒い画集」などの鈴木英夫監督によるサスペンス映画。キャストは木村功、津島恵子、志村喬などなど

ラジオ商を営む夫婦がいた。平凡で慎ましく過ごしていたが、旦那が向かいのお店で起きた殺人事件の犯人を目撃してしまう。旦那は関わり合いを恐れて警察に事実を報告するのを躊躇うが、狡猾な犯人は彼がもし密告すれば奥さんが不幸になると脅迫してくるのであった

とある殺人事件を目撃してしまったがゆえに、段々と追いつめられる夫婦の活劇をスリリング一杯に描いている。監督は和製ヒッチコックという異名がある鈴木英夫。

音楽は八甲田山や砂の器などでも素晴らしい音楽を見せる芥川也寸志。彼の不安感を煽るようなピアノの曲を絶妙なタイミングで挿入する監督の手腕が素晴らしい。

ほとんど無駄なBGMや演出を避けながら、ミニマムで最低限の演出のみで恐怖感を最大限に煽るのが素晴らしいですね。

通り過ぎる列車が出す音、ラジオから流れるノイズ、忍び寄る足音などから考えてもサスペンスの恐怖を過剰すぎることもなく、しかし物足りなくもない絶妙な感覚で差し込む。それ故に終盤に至るまで目を離せず緊張感が持続し飽きない作品となっている。

チンドン屋やらお坊さんなど、不気味な要素の配置の仕方もとても良くできている。それでいてあまり無駄がない。

終盤でついに追いつめられた時に時計の秒針の音で心臓の鼓動を表すというのも使いふるされているのかもしれないが、やはり見ていて迫力がある。

一番初めの段階で列車が横から走ってきてタイトルとスタッフロールが流れて、最後に事件が解決してから列車が来て終というタイトルバックで終わるのもしゃれている。

ウェルメイドでとても良くできていたサスペンス映画であると思いました。和製ヒッチコックは伊達ではなかった。

しかし東宝映画ということもありキャスティングも見馴れた人々がいましたね、土屋嘉男や沢村いき雄、志村喬などゴジラ映画のメンツばかりが勢ぞろい。とても見ていて面白かったですね。

これだけの作品が未だに配信もDVDにもなっていないのが惜しい。素晴らしい映画でした。また見れる機会があれば見てみたいですね。

鈴木英夫監督②

右から左に貨物列車が走るのに合わせてクレジットが右から左に流れるタイトルバックからして格好いい。
その後、殺人犯を目撃した主人公（木村功）が身重の妻（津島恵子）を守るためもあって警察に協力するしないで逡巡している場面は正直やや長いが、協力することを決めてから後のサスペンスの盛り上がりは凄まじい。
（以外、若干ネタバレ気味）
モンタージュ写真とそっくりのチンドン屋の男が街を練り歩いた後主人公の店の外から中を覗き込む顔の怖いこと！その時だけチンドン屋の音楽がグッと大きくなって自分も主人公と同じように竦み上がる。
その他、坊さんが歩きながら叩く太鼓の音や主人公が仕事で修理するラジオの音など、この作品では音がサスペンスをもたらすキーになっている。
極め付けは毎日同じ時刻に近所を通り過ぎる貨物列車の轟音。その音に合わせて犯人が拳銃を発射しようとしているのを見て観客のハラハラドキドキは加速する。それはまさにヒッチコック映画のよう！

和製ヒッチコックの異名を持つ男、鈴木英夫！緊迫した空気感と、冷や汗サスペンスの対比で常にドキドキ…くっそ面白い！キワモノ扱いされていた日本のスリラー映画をハリウッド映画に負けない上質なものに仕上げるため、撮影三浦光雄、音楽に芥川也寸志、さらに主役に木村功、犯人役に宮口精二、刑事役に志村喬、常連男優土屋嘉男などが集められ、まさかの「七人の侍」再結成である。

1番びっくりしたのはオープニングで列車とともにタイトルバックが出てくるのだが、ラストに繋がる伏線がすでに演出されているとは思わなんだ！天才か？！

しかもヒッチコック、ラングを思わせる緊迫感を盛り上げる音の使い方が凄まじく、蒸気機関車、ちんどん屋、叩き念仏、ストーリーのキーモチーフであるラジオ修理の音を駆使して心理的に追い詰められる主人公に没入してしまう。いやだから天才か？！くそおもろい古典サスペンスの傑作。

• #2016〜