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華麗なる週末のtakのレビュー・感想・評価

華麗なる週末(1969年製作の映画)
3.8
マーク・ライデル監督作を観たことがあるのは今のところ5本。「黄昏」「フォー・ザ・ボーイズ」「ローズ」は特にお気に入りだ。どれも心の隅で大事に思い続けたい映画たち。

スティーブ・マックイーンが非アクション映画で主演したライデル監督作「華麗なる週末」を初めて観たのは、マックイーンが亡くなった1980年だったと記憶している。テレビでは追悼番組が組まれ、主演作が次々と放送された。「ゲッタウェイ」や「ブリット」「華麗なる賭け」などはもちろん素晴らしいのだが、「華麗なる週末」は少年の成長物語であるせいか、当時の僕の心に強い印象を残した。レンタル店で旧作を漁っていて再会。ウン十年ぶりの再鑑賞である。

20世紀の初め、まだ自動車が珍しかった時代。主人公はミシシッピに住む少年ルーシャス。祖父は、町で最初に自動車を購入した大富豪。葬儀で数日大人たちが不在となり、一家の使用人ブーンからメンフィスに車で旅行しようと誘われる。ブーンの悪友である黒人青年ネッドも一緒に、いざメンフィスへ。ブーンがなじみの娼館に泊まることになったルーシャス。そこへネッドがやって来て、「車を馬と交換した。草競馬に勝って取り戻そう」と言い出す。しかし手に入れた黒馬はちっとも走らない。ブーンの彼女コニーも巻き込んで、彼らをめぐる騒ぎはエスカレートしていく。

11歳のええとこの坊っちゃんが、男と女、人種偏見、大人の事情などなど、世の中のままならない部分を知ることで、ひとつ成長する4日間の物語。娼館で裸婦像を見つめる様子、素敵な人だなと思ったコニーが娼婦だと教えられて「そんなことあるかっ!」と殴りかかるピュアな気持ち、そして現実を知って落ち込む少年。彼を指南する役割のブーンも中途半端な大人だが、彼もこの4日間を通じて生き方を変えることになる。

クライマックスの競馬シーン、身勝手な大人たちの振る舞いにイライラするがそれを吹き飛ばす少年の活躍。彼は自分の周囲の期待と、その中で自分の役割を果たす喜びを初めて知った。少年時代を回想するナレーションは、「ロッキー」の老トレーナー、バージェス・メレディス。音楽はジョン・ウィリアムズ。
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