sonozy

日陽はしづかに発酵し…のsonozyのレビュー・感想・評価

日陽はしづかに発酵し…(1988年製作の映画)
4.0
まずこの気になる邦題『日陽はしづかに発酵し』。
“日陽(ひびと読むらしい)”に、“しずか”でなく“しづか”(旧仮名づかい?)に、“発酵し”ですよ。
意味はよく分かりませんが、本作の視聴体験に合っているような気もするので、考えた方、凄いんじゃないでしょうか。

英題は『Days of Eclipse』≒ 食(日食/月食)の日々。Eclipseは、光が遮られること、輝きを失うことといった意味もある。
ということで、中央アジア、トルクメニスタンの荒涼とした大地に漂う、絶望感・諦め感の漂う、知性も文化も程遠いような生活を余儀なくされた人々の中に、異質な白人の青年医師マリャーノフが、診察と研究論文に来ているという設定。

このマリャーノフ演じるアレクセイ・アナニシノフは、ソクーロフ監督作『Mother ans Son (1997)』の雰囲気とは違い、ロン毛、鍛えた上半身見せ、Tシャツ&ジーンズで、医師らしさはゼロで、イケメンな顔付きも含めカリフォルニアあたりのサーファーにしか見えず(笑)。
散らかった汚い部屋で、一応診察らしきこともしたり、たまにタイプライターに向かったりしてますが、どう見ても仕事/研究が捗っているようには見えない。
それと、何人かが彼に「書くな!」と書くことを止めようともする。笑;

オオトカゲや大蛇、ゼリー固めロブスター、耳障りな電話の音、突然やってくる姉、自殺したはずが遺体安置所で話しだす男、突然部屋に乱入する銃持ったヤバい男…

現地の友人、サーシャというヒゲ男とは何やらエロスも漂うシーンも。
いつの間にか家の外で寝ていた白人少年との会話・視線・不思議な時間(このジャケ写)。
サーシャの部屋?の壁にへばりついていた不気味な何か….

映像はセピアとカラーが入り混じり、突然の大声や、ラジオなのかな?流れている声、民族音楽やクラシックなど多彩な音楽やサウンド…
時おり驚くようなカメラワークやキマったショット。

不条理で不可解ながら、マリャーノフがパンツ一枚でバク転してベッドにうつ伏せ寝するシーン、喧嘩を止めに入ってボコられるシーン、一両の列車で座ってるサーシャの膝を叩くとちょっと間を開けてサーシャがぴょこんと脚を反応させるシーンなど可笑しみも漂いつつ、寓話的でもあり、最後は神々しさすら感じる読後感。
やはり、ソクーロフ監督、只者じゃない。

SF作家ストルガツキー兄弟の『世界消滅十億年前』を原作としつつ、大幅に脚色しているそうですが、どんな原作なのか気になります。
sonozy

sonozy