キヲシ

乳房よ永遠なれのキヲシのレビュー・感想・評価

乳房よ永遠なれ(1955年製作の映画)
3.5
実在の歌人をモデルにした映画の4K版。前作「月は上がりぬ」と同年に公開。続けて見た。たぶん史実に即してなんだろうが、函館?の牧場の片隅で幼い兄妹との慎ましい暮らし、すっかりひねくれてしまった夫に嫌みを言われながらも、いそいそと句会に出掛ける月丘夢路。あーたの作品は露悪的みたいな嫌みを言われるが、だってそうなんだから仕方ない的な答えを返す。奥に見える玄関に帰宅した月丘、手前の部屋で連れ込んだ女の私物を画面左に除ける夫。走り去る女。脱ぎ捨てられた白足袋を見つけ倒れ込み、それを放り投げる月丘。なんてこった。句会の主催者で学生時代からの友人である杉葉子と森雅之夫婦を訪ねると、森は入浴中、小窓から声をかける杉。後に術後の月丘がこの湯船に浸かりある告白にいたるのだが…。雨の中、帰る月丘をバス停まで送る森。走り去るバスから傘を持ち佇む森を見るショット。病弱なはず…案の定、最後の別れ。そして後半、乳癌手術後の月丘を見舞う葉山良二が呟く「陰気な処ですね」。うーむ、黒沢清「CURE」が思い浮かぶ。この世とあの世の間の二人。隣のベッドには妻を見舞う左卜全がいたが病室を移ることに。その左を見かけ、あとを付ける月丘が辿り着いたのは霊安室。面前で檻のような扉が閉められる。再び閉じられるときは…。洞爺湖行きを勧めたのは森ではなかったか。
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