このレビューはネタバレを含みます
先にドラマ版(1958年)を見ていたのでストーリーは知っていた。配役の変更はあるけど、演出やストーリーに大きな変更点は無い。
戦時における上司の命令(=天皇の命令)という拒否権のない状況で犯した罪によって裁かれてしまう。主人公の豊松がどこにでもいるような気のいいおっさんなだけにそのギャップが切ない。特に終盤は減刑、釈放待ったなしのような浮ついた雰囲気からの突然の絶望。ラスト15分における、人生を諦めなければならない豊松のどんよりとした重さや暗さと、豊松の帰りを待つ家族が過ごす平凡な日常との対比が残酷なまでに際立つ。
独房の同居人の「嫌な時代に嫌なことをしたものです」というセリフが心に残った。
2024_029