巨匠オリヴェイラの日本公開最新作。100歳を超えて尚、このあとに撮影した作品が未だ控えている、という素晴らしさ。
とはいえ、内容は、『アブラハム渓谷』をあっさりと薄めて男性視点から描いたという感じで、ちょっと物足りなかったかな。オリヴェイラさん、女性を主人公に据えた方が、面白くなることが多い様ですね。
ラストに今更感が付きまとっていたりもするのですが、若い男性の生理って、あんなもんなのかもしれません。
ただ、見るだけで男心を狂わせるはずの窓辺の美女があまり魅力的に見えなかったので、説得力がありませんでした。あの程度の美女に狂うのなら、もう少し男性の側の抑圧されざるを得ない生活の事情、みたいなところをきちんと見せてほしかった気がします。
他のオリヴェイラの映画を見ていたらあえて今更見るまでもない作品かと思います。
っていうのが、映画そのものへの感想。
でも、この映画、観光映画としてみると色々と付録が多くて楽しめます。
舞台がリスボンで、お金持ちの私邸で開かれる色々なイベントが映し出されるので、戦災を受けていないがため、きちんと残っている18世紀からの文化財が目の保養になりますし、詩の朗読も面白かったです。特に、ポルトガル名物のタイル画や宝飾品は素晴らしい。
暇ができたら、リスボンにホームステイして、ゆっくりポルトガルを旅してみたくなりました。
エンドロールで、助成金を出した観光関係の企業や協賛の政府機関のクレジットが次々と映し出されるのですが、せっかくだったら、列車の旅、ではなく、自動車の旅にして、物語を周囲の風景とリンクさせて語ってほしいと思いました。
監督が、もう少し若い頃に、ロードムービーとして企画が出れば素晴らしい映画になっただろうと少し残念。
(リスボンに遊びにいきたくなりました 2011/2/4記)