ウサミ

逆境ナインのウサミのレビュー・感想・評価

逆境ナイン(2005年製作の映画)
3.9
熱血青春おバカ映画。
「全力でないものは死すべし」が校訓の全力学園、万年一回戦敗退の野球部のキャプテンである不屈闘志が、廃部をかけて甲子園を目指す話。
見所としては、甲子園をかけた試合、9回裏、112-0の大差に立ち向かうところ。

『吼えろペン』の島本和彦の熱血スポ根漫画が原作で、明らかに現実離れした荒唐無稽なドラマが目を引く。
「荒唐無稽な」を免罪符に、めちゃくちゃな展開が数多見られ、真剣に突っ込んでいればキリがない。かなり乱暴な展開に、笑いを狙った編集、超常現象に苦笑いのCG。もうめちゃくちゃだ。

しかし、本作は、あくまで「おもしろギャグ映画」ではなく、「熱血スポ根映画」である。
不思議なもので、この無茶苦茶な展開が、いつしか心地よく、引き込まれるものになっている。

その理由のひとつは、玉山鉄二の仰々しい演技がある。
端正なルックスのなかに、絶妙な清潔感と暑苦しさが兼ね備えられており、本作の主人公としての纏まりが異常に良いのだ。
さらに、漫画的、フィクション的に振り切った演技が、どうもサムくない。映画の舞台の中で、真剣に、真っ直ぐに「逆境」に立ち向かっている。
例えば、本作はめちゃくちゃ非現実的だ。そりゃ112点差は覆せないし、そもそもそんな点差がつかない。しかし、それはあくまで観客がいる現実の世界の話だ。本作は、『逆境ナイン』の世界であるから、諦めなければ成し遂げれるのだ。主人公の不屈闘志は、決して諦めない。それがリアルだから。玉山鉄二は、全力で演技をし、それにより本作がただのつまらないコメディに成り下がっていないのだ。
俯瞰で見るとおふざけかもしれない。けど、あくまで真剣に。真剣にふざける。いや、ふざけない。ふざけないで真剣にやるから、面白くなる。どこかの埼玉のくだらない映画に比べたら、はるかにコメディとして上質だと思う。

問題は、やたら長い。
前半での没入感も、中盤以降の長さから、完全に失われ、正直終盤は飽きる。
熱血ゆえの邁進も、逆境への超克も、どれもこれも、その瞬間のアドレナリンであって、即効性は強いが持続性は弱め。次々とアドレナリン注射をしなくてはならないが、やはりパワー不足を感じた。
115分はつらい!正直、80分くらいでちょうどよかったのでは?

男たちが泥まみれで逆境に立ち向かう姿は、好きだ。やはり夢中になってしまう。冗長なのは置いといても、モチベーションムービーとして案外いいかもしれない。

出演:炎尾燃
で笑った。
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