たた

逆境ナインのたたのレビュー・感想・評価

逆境ナイン(2005年製作の映画)
3.9
「飛行機ってのはどうしてあんなに高く飛べるんだろう…?」

あまりにも無謀な戦い!
とてつもない逆境を前に、主人公の不屈は空を見上げて思ったのでした。
そして、その逆境をついに乗り越えたとき、気付くのです。
「そうか…飛行機があんなにも高く飛べるのは」

…という、原作の、決勝戦のクライマックスのくだりを省いてしまうとは…もったいない…

自分は原作ファンです。
この映画化は、お世辞にも成功したとは言えないんでしょうねー。
バカバカしい楽しさはあるんだけども。

名物キャラや名場面が省かれてるし、
ギャグ方向にも熱血方向にもリアル指向にもどちらにも振り切れてないし、
男球を実写でどう表現するのかと思ったら、原作のビジュアルに頼ってCGでお茶を濁しただけ…
ラストはわざわざオリジナルの展開にしておきながらつまんないし。
野球経験者はバカにするなと起こるだろうし、映画の考察が得意な人なら映画として駄作であると認定するでしょう。

それでも!
僕はこの映画を嫌いになれないのです。
むしろ好き。

逆境にぶつかるたびに出てくる名言には、日々を呑気に過ごしているだけの自分ですら、心の奥底が何かしらうずうずしてしまうのです。

「お前が気絶している間こいつらは、何点取られようが、バカにされようが、笑われようが、戦い続けた!

ボロ雑巾のようになるまで叩きのめされても、諦めなかった!

…なぜだ?
それは…

まだお前が!いるからだ!!」

9回裏、最後の攻撃、点差は100点を超え、チームメイトは軒並み脱落!
野球というスポーツが生まれて百数十年、プロアマ問わず、現実創作問わず!
これほどの逆境に見舞われたのは逆境ナインだけであろう!
乗り越えて見せたのも!

「そうか…飛行機があんなにも高く飛べるのは」

「凄まじいばかりの、空気の抵抗があるからこそなのだ!」


おまけ
確か島本先生の人生相談みたいのが単行本の巻末に載っていて。
「志望校を担任に言ったら、次のテストで全教科満点取れるならいいよ、と無茶なこと言われました。どうしたら…」
という学生の相談に、
「テストは満点より上は取れないけど、満点は取れるように出来ている。取れ」
だそうです。痛快。
たた

たた