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未来を生きる君たちへのodyssのレビュー・感想・評価

未来を生きる君たちへ(2010年製作の映画)
2.0
【筋書きが甘すぎる】

スザンネ・ビア監督とは相性が悪いと思ってきたけれど、今回も同じであった。

一言で言って、筋書きが安易に過ぎるのである。

例えば学校のイジメ。イジメっ子てのはどこにでもいる(日本では福祉国家で楽園みたいに思われている北欧にだっている)ということを改めて認識させられたのはいいけど、あの展開、ないんじゃない?

イジメっ子って、もっと手ごわいものですよ。一度やられたら、二倍にしてやり返すのが普通でしょ? それに手下も何人もいたようだから、自分でできなくても手下にやらせるでしょ? それが教師に言われてあっさり和解し、教師の手前だから見せかけの和解をして後で復讐してくるのかと思いきや、あれでおしまいなんですよね。あんなに簡単に行くなら、学校のイジメなんてとっくに根絶されてますって。

或いは、医師に殴りかかってきた男。医師は後日、子供を連れて「なぜ殴ったのか」と聞きに行ってまた殴られるんだけど、殴り方が優しい。あの手の男はかっとなりやすいものだから、子供まで連れきて変に優越的な問いを投げかけられたら(優越的というのは、医師はステイタスの高い職業だけど、あの男は自動車修理工で社会的に見れば下のほうだから。あのシーンはそういうところも含めて見ないといけない)、そりゃ頭にきて、医師をぼこぼこにするんじゃないかと思う。簡単には立ち上がれないくらいに殴る、と私は思うけどね。それがあんなに優しい殴り方で終わるなんで、女性監督の限界か、と首をひねりました。

或いはアフリカの情勢。医師の仕事だからとビッグマンを治療してやって、しかし周囲の現地人の目は冷たいですよね。その辺でごたごたが起こりそうなのに、なぜ起こらないのか。しかも最後は医師の乗った自動車を子供たちの笑顔が送るシーンで終わっている。あんな終わり方でいいんですか? 問題山積の地域のはずなのにね。

こんな安易でいい加減な映画に賞を贈る奴の気が知れませんね。
映画人の知性が問われる、と敢えて言っておきましょう。
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