垂直落下式サミング

帰って来たドラキュラの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

帰って来たドラキュラ(1968年製作の映画)
3.3
英国ホラーの名門ハマーフィルムによるモンスタームービー。深い眠りについていたドラキュラが、生き血を求めて再び目を覚ます。クリストファー・リーがドラキュラ伯爵に扮するシリーズ。
やはり、ヘルシング博士が登場しないことによるストーリー面のチープ化は否めず。前作のヒーローを降ろして敵役だけを踏襲したことで、物語の魅力が大きく減退してしまっていた。
吸血鬼の知識を持った化け物博士であるとか、敬虔なクリスチャンであるとか、そういった信念を持った人が怪異を目撃し、己の信仰を揺さぶられながらも強い意思の力で戦うのならば展開に面白味もでるが、最終的にドラキュラ伯爵に対抗するのがチャラチャラした無心論者の若者では、どうにも張り合いがない。
酒場の若者の三角関係、怪物の手先となってしまう司祭など、人間側のドラマを補うためにストーリーに新解釈を加えているが、それでもドラキュラの好敵手として相応しい人物を創造できず、ショックシーン以外では緊張感の持続が厳しくなっている。
「ドラキュラ」の魅力は、クリストファー・リーの役者としての力量に還元されて語られがちだが、モンスターには好敵手となる相手役が必要なのだとあらためて意識させる。化け物を倒すのはいつだって人間だ。
撮影についても、カラーフィルターを通した照明テクニックを用いて、ドラキュラを超自然的な存在として演出し、カラーコンタクトを入れた血走った目玉をみせるのはいいが、同じ音楽にのせて現れたあとに目元をアップにするばかりでは、いまいち迫力に乏しい。
それでも、美人モデルのベロニカ・カールソンがいたいけな乙女を演じており、不用意に招き入れたものを虜にするのは吸血鬼のセオリーに忠実。低予算の続編映画ならではの楽しみかたは出来るので、しっかりした娯楽作ではある。
暴君ドラキュラの命令とはいえ、かまどの火力ごときで死体を焼いて隠蔽してしまう、神父の出来る男っぷりに惚れた。