和桜

震える舌の和桜のレビュー・感想・評価

震える舌(1980年製作の映画)
3.4
ホラー的な評価が先行するものの、実際は作者の体験に根差して一つの病気の恐ろしさを伝える社会派映画と言っても良い。耳を塞ぎたくなる叫び声、体は何度も痙攣をおこし、顔面は血だらけ。原因が分からなければより恐ろしい話なんだけど、それをエンタメ的に隠すことはせず、原因が破傷風であることを最初に教えてくれる。

破傷風の怖さはもちろん、特に秀逸なのは闘病生活を支える家族の描写が非常に濃い点。馴染みのない病気に対して、「自分も罹っているかもしれない」という強迫観念にかられる父と母。こういうとき、医者や看護師と上手くコミュニケーションが取れればいいんだけど、最初の病院で適当にあしらわれ植え付けられた医者への不信感はそれを遠ざける。ここは昨今の社会情勢的にも共感せざるを得ない人が多いと思う。
全体として娘を見守り動揺する家族側の視点で見てしまい、「本当の意味で病気と戦っていたのは娘だけだった」という言葉が強く印象に残った。
和桜

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