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銀心中のmhのレビュー・感想・評価

銀心中(1956年製作の映画)
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新藤兼人の才能が随所で光ったジャパニーズカサブランカ。
本気で愛し合ったもの同士が、「カサブランカ」みたいにきれいに別れられるはずがない。原作があるものなので、そんな企画意図はなかったと思うんだけど、新藤兼人と音羽信子のなれそめに触れるとあながちその線も捨てきれない。
傾いた画面の中泣きながら歩く音羽信子やら、戦中戦後の床屋の細部やら、いまはなき軽便鉄道の雄姿やら、画を見ているだけでもと取れてる。
吸い殻を捨ててたあの室内ストーブは初めて見た。
「(雨が)シャツまで通ってる」
「わたし時計ばっか見てた」
「検査は来年か」(徴兵検査のこと)
などなど、会話も生々しくって良かった。
「あのひとわたしに似てるわね」というセリフが吐ける自己肯定感いいよね。恋愛サイヤ人とでも名付けたい。
男女の赤裸々なくだりは、監督と女優の間に本当にあったことなのか、やたら共感性羞恥を誘ってきた。
タイトル通りの終わり方をするんだけど、最後に自殺して話が終わるというテンプレがかつてはあって、そして多かったということは踏まえて望まないといけないんかもしれない。
原作者である田宮虎彦は「足摺岬」が代表作なのか。たしか、ダビングしたものがあったので、近いうちに見ようと思ってる。
面白かった!
mh

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