三隅炎雄

底抜け便利屋小僧の三隅炎雄のレビュー・感想・評価

底抜け便利屋小僧(1961年製作の映画)
4.5
ジェリー・ルイス監督3作目。経費増大に悩むメジャー映画会社社長が、夢を抱いてハリウッドにやってきた青年ルイスをスタジオ労働者のズル発見用スパイとして雇うという、まことに夢のある!お話。
当然ポンコツなルイスは至るところで騒動を起こすわけで、それをモノクロ画面でスケッチ風に綴っていくのは監督デビュー作『底抜けてんやわんや』と同傾向。やはりどこかジャック・タチに通じる味がある。
大掛かりな破壊も一応あるが、ラストに向かって話を盛り上げていこうなんて意欲は皆無、インテリ監督に認められ一躍喜劇映画スタアになった主人公ルイスだけど、なんか嫌な感じのヤツにもなっちゃったで話を閉めるあたり、スパイの件を含めハリウッド映画産業に対しとことんシニカルである。
今回は人形を使ったギャグが目につく。ルイスが人形に間違われたり、人形が実は人間だったり、境目がない。どちらも中は空っぽなのである。ルイスが人形相手にハリウッドで暮らす孤独を語る場面の詩情が、この映画の白眉であろう。
三隅炎雄

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