春名ハル

白バラは死なずの春名ハルのネタバレレビュー・内容・結末

白バラは死なず(1982年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

「白バラの抵抗運動」については諸説あるが、1983年に公開されたこの映画は少ない資料の中で彼らの活動についての概要と「政治的思想」に基づいて行動しているという描写がある点においてよくできていると思う。
それまで「白バラ神話」という自己犠牲精神や善きドイツ人としてのシンボルとしても掲げられていた白バラのメンバーを人間に引き戻す作用が見受けられた。

この作品は他のふたつの白バラ映画と違いゾフィー・ショルに焦点を当てていない。もちろん彼女は途中から参加したにも関わらず兄であるハンスとの対話や自身の信条に沿って尋問官の取引に応じず兄と共に処刑されることを選んだ。
この映画が公開された時点ではまだドイツが統一されておらず、資料が今よりも少なかったにも関わらずとても良くできていると思う。
「白バラの抵抗運動」の概要を知る上ではこの作品を見てからの方がほかの二作品への理解が深まると思う。

制作が西ドイツということにも注目をしたい。「善きドイツ人」としての神話となりかけていた白バラの活動をあえて政治的な思想があるという前提で作られた脚本は、それまでの解釈に異議を唱えるといえ点でとても意味のある作品だと感じた。

同年に公開された「最後の日々」を見て比較することにより、どちらの魅力も監督の意図も感じることが出来る作品だと感じた。

「白バラ」映画3作品の中でどれを最初に勧めるか尋ねられたら迷いなくわたしはこれから見ることをおすすめする。

混沌の時代を生きる人間のひとりとして、彼らの行動や信念には見習うべきところもある。また、ハンス・ショルやゾフィーの行動には現代を生きる私にはりかいでしないこともあり、戦時中という特殊な環境下での生活、政府への抵抗という行為は精神をかなり消耗していると推測できる。
彼らの大学でのビラ配りに対しては不明な点が多くあり、それぞれの映画での表現も異なるのでそれぞれを見比べることま白バラ作品の楽しみだ。
春名ハル

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