シズヲ

ドラゴン怒りの鉄拳のシズヲのレビュー・感想・評価

ドラゴン怒りの鉄拳(1972年製作の映画)
3.6
ブルース・リーによる香港カンフー映画の2作目であり、彼の人気を不動のものにしたという大ヒット作。上海の租界を舞台に、悪辣な畜生日本人道場にリーが立ち向かう!!本作の日本人、ほぼ下衆なので凄い。中華人への抑圧に抵抗する内容も相まって、味わいは半ば抗日映画に近い。ちょっと複雑な気持ちになるが、まぁ観客のニーズに応えてるのだろうなあ(それはそうと謎のビキニ遊女はなんやねん)。悪役として出演している橋本力と勝村淳は当時勝プロダクションに所属しており、勝新によって香港へと送り込まれたという逸話が何だか興味深い。ブルース・リー、『座頭市』のファンだったらしいのがやはり嬉しい。

戦うのか戦わないのかさえ途中まではっきりしなかった『ドラゴン危機一発』の緩慢ぶりと比べると、日本人道場がめちゃめちゃ嫌な悪役として立ちはだかるので早々にリーがやる気満々になってくれる。本作は前作以上にリーを主体的に扱う内容となっているので、序盤からリーの大立ち回りが見れるのが嬉しい。道場に乗り込んだリーを道着姿の日本人武術家達が取り囲む絵面、インパクトに満ちてて好き。そっからのヌンチャクを交えた格闘殺法のシーンも期待通り切れ味抜群、キレッキレの大暴れぶり。このシーンのおかげで、かなり早い段階でカタルシスを得られるのが良い。

序盤を越えて以降はリーの隠密行動やロマンスなどに視点が置かれて、次なる大立ち回りは終盤までお預けとなる。この辺りで気怠さを感じなくもないものの、前作と違って序盤で敵との対決姿勢やリーのカンフーを押さえてくれるのでまだ広い目で見ていられる。「犬と中国人は入るべからず」の看板を叩き割る飛び蹴りや精武館VS日本人道場の大乱戦、千手観音のごとく残像が映るリーの構えなど、要所要所で外連味の強い演出が散見されるのも楽しい。

そして終盤の強烈な大立ち回りを経た後、ストップモーションで幕を閉じるラストシーンに度肝を抜かれる。最早『明日に向って撃て!』の領域。前作も苦々しかったとはいえ、本作はリーの悲痛な咆哮も相まってより遣る瀬無い悲壮感に溢れている。中国人を虐げる圧制へと果敢に立ち向かい、最期は悲劇の結末を迎える反骨的ヒーローとして駆け抜けていった陳真。彼がその後中華圏を代表するキャラクターとなったらしいのも何だか納得してしまう。
シズヲ

シズヲ