菩薩

あんなに愛しあったのにの菩薩のレビュー・感想・評価

あんなに愛しあったのに(1974年製作の映画)
4.5
タイトルとジャケからゴリゴリのラブロマンスかと思いかなり身構えて見始めたが全くの杞憂で、むしろカサヴェテス『ハズバンズ』を想起させる様なおっさん3人のわちゃわちゃ物だった。とは言えズッ友だよ😢とベタついた関係では勿論無く、かつては同じ山岳部隊に属し、同じ女性を愛してしまった3人のつかず離れずの絶妙な距離感の維持とそれぞれの「戦後」が語られていく。彼等自身の人生そのものは決して豊かとは言い難いが、それを通して語られる過去30年余りのイタリア映画の豊かさの結実をここに見る。この作品自体はヴィットリオ・デ・シーカに捧げられており、彼の代表作たる『自転車泥棒』はかなり大胆にフューチャーされているが、他にもヴィスコンティ、アントニオーニ、ロッセリーニに間違えられる『甘い生活』撮影中のフェリーニ(しかも本人!)と錚々たる面子が取り上げられていく。賞金獲得型クイズショーに出演したシネフィルが問題の裏側に熱中し過ぎて不正解にされるとこなんて最高過ぎるが、スコーラ自身の映画に対する熱い愛と感謝を実感する名場面でもある。これは映画を愛すると自称する方々なら嫌いな人いないのでは…?個人的にはATB級の大傑作。
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