柳之貓

アキラ AKIRAの柳之貓のレビュー・感想・評価

アキラ AKIRA(1988年製作の映画)
4.5
アニメーションならではの圧倒的な超現実的表現力がフルに発揮された、サイバーパンクアニメのルーツとも言えよう金字塔作品!

アメコミのような色使いや、『2001年宇宙の旅』のようなサイレント表現、『ブレードランナー』の様な世界観と、影響を受けているものは見受けられるが、それと同時にその後の作品に影響を与えたであろう斬新な表現も見出だせる。

序盤の雑多な繁華街は、押井守の『イノセンス』の様だし、姫神音楽の様な和風民族色が色濃い作中音楽にも擬似要素が見られる。
地下施設に入っていく斜面エレベーターは『エヴァ』のジオフロント進入路でも出てきた。エンドロールでGAINAXが関わっているのが見れたが、ガイナ及び関係者に与えた影響は大きいと思われる。
オペレーション場面で、各方面の報告や通信が錯綜するのは、押井守映画版『攻殻機動隊』の冒頭や『エヴァ』ではお馴染みだが、当作品でも見られた。
また、今やファッションブランドやビールのアイコンになっているエビスだが、ここからの影響は無いだろうか?

映像表現も素晴らしかった。
バイクのテールランプの表現は有名だが、それ以外にも緻密なリアリティ表現には圧倒された。特に地下施設に入っていく過程での霜や埃、ドライアイスの様な溜まった冷気、トビラが開く時のスリットから光が漏れる様など、現実以上にそれっぽく魅せる表現がとても巧い。

人物の演技は大袈裟か表現不足(特に子供の演技は、本当に子供にアテさせたのか下手過ぎる)、ストーリーはやや冗長で正直大したことないと思ったが、それをもっても余りあるほど映像表現が素晴らしい。
金田が病室で子供たちから襲われるシーンでの現実と虚偽の境目を曖昧にした表現なんて、絶妙と言わざるを得なかった!
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