すず

天使の涙のすずのレビュー・感想・評価

天使の涙(1995年製作の映画)
3.5

香港のスラムに生きる名もなき人生たちがそっと交錯する 愛憎入り混じった エキゾチックで 不思議とファンタジックな群像劇。

殺し屋の男と、その相棒のエージェントの女、口のきけない指名手配犯のホー•チー•モウ、失恋と初恋の電話女、くるくるショートの金髪女。

5人の人生、それぞれのストーリーには脈絡も一貫性もないけど、それらが時折 交差し合い、次第に一編の映画としてのストーリー性を感じさせる。それはまさに、いま我々がこうして生きている人生同士の出会いと別れのよう。やはり他人の人生はドラマチックに見える。そんな人生ドラマが時折、こんな風に交錯するのだ。それは濃密であったり、ただすれ違うだけのものかもしれないけど。そんな不思議をシネマチックな煌めきで描いている。

一見 破茶滅茶にも見えるけど、彼らの会話とその台詞、場面場面が詩情に富んでいてとても美しい。そして、それらから伝わるものは人間の生と死の狭間で営まれる至って普遍的なものである。まるで、煌めく生命賛歌のよう。

90年代の香港映画の色気に満ちていて、ウォン•カーウァイは映像アーティストだなと思った。

黒髪ロングのミッシェル•リーの美貌が素晴らしかった。まさにアジアン•ビューティー。

※『恋する惑星』のなかの一企画が広がって本作になったらしい。適当に選んだので、ちゃんと『恋する惑星』の方から観ればよかった…。
すず

すず