イチロヲ

棒の哀しみのイチロヲのレビュー・感想・評価

棒の哀しみ(1994年製作の映画)
3.5
組長から厄介払いされている刑務所帰りのヤクザ(奥田瑛二)が、独自路線で分家を発展させようとする。極道から脱出不能に陥っている男の人生模様を描いている、ヒューマン・ドラマ。北方謙三の同名小説が原作。また、神代監督は肺気胸の症状が致死レベルに達している状態で撮影を敢行している。

特殊極まりない人間性をもっている男の「生態」を観察するための作品。義理人情に厚いが、喧嘩を売る行為を能動的におこなわないと生きていけない人間の物語。神代哲学の「みっともない生き方の美学」を全面的に打ち出していくスタイル。

主人公の「独り言を喋ってしまう癖」について、(本編内でも言及しているものの)どこに行っても危ないことを口に出して喋るのは、さすがに違和感満点。過剰な説明台詞とカキワリ現象(周囲の人間が無反応になる現象)が多いところも気になってしまう。

演者に様々な動作をさせておきながら、その一挙手一投足を映像に収めていく技法は、紛うことなき神代流映画術。一心不乱に写真を作ってきた神代監督が、主人公の人生観に同調していく感覚が、最大の醍醐味となる。
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