井出

破戒の井出のネタバレレビュー・内容・結末

破戒(1962年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

冒頭からうまいな〜、緊張感、カット切って描く、塩をふることの意味、自分が死ぬ前に…
破戒、部落ももはや宗教か。
カメラワーク、アングルもいい、最初は、部落出身者を見下げるアングルがあったが、猪子が出てきたり、最後の方は見上げるものが多い。被差別民がむしろ尊敬されるべき崇高な精神をもつのかもしれない、「普通」のひとと同じように。
伏線もある、塩であったり、おしおが階段を見下げたり、議員が丑松をにらんだり…内容、テーマだけですごいのに、話のうまさもすごかった
杉村さん演技うますぎ、複雑な心理描写、ほかの役者陣も、市川雷蔵の最後の演説も、生徒に嘘をつき、それを恥じたあの土下座は美しかった。人間の美、精神の美。なんともいえない感情、泣いた。社会性の強すぎる作品に出る役者陣の心意気にも感動する。
士族ほど使い物にならんものはない、明治の社会がどのようかがわかった。村にいる人は五つに分かれていてその全てが登場したが、みな醜く、やはり人間くさい。部落出身と変わらないではないか。教育観も出ていて、勉強になった。校長とか、長門さんとか。こういう心でありたい。
さすが小説が原作なだけあって、セリフや登場人物の心理は死ぬほど練って考えられていて、共感せざるをえない。とくに猪子やその妻は年行ってるのと悩み多いだけあって、かなり練られてる。
不吉な予兆、カラスや雪や、その辺の演出にもはっとする。話に集中しすぎて、技術を見るのにおっつかない陰影もあったし。おれには早すぎた。
猪子が殺されるところもすごかった。無音がいい。最後に帽子だけとるのもよかった。
最後、冷厳な雪のなかで生活を営む人たちの暖かすぎる心がなんとも言えず泣きすぎた。
これを映画にしてくれたことに感謝。
井出

井出