開明獣

ピンク・フロイド/ザ・ウォールの開明獣のレビュー・感想・評価

5.0
あの名匠、アラン・パーカーの力を持ってしても、どうにもならなかった、壮大な失敗作😔

ピンク・フロイドは、プログレッシブ・ロックバンドとしては、その高い音楽性もさることながら、最高の商業的成功を収めている。「狂気」は、全世界で5,000万枚を売り上げ、ロングセラーのギネス記録を打ち立てた。

本作のベースとなり、その後に発売された、「ザ・ウォール」は全世界で3,000万枚を売り上げ、2枚組アルバムとしては最も売れたアルバムなのである。

ピンク・フロイドらしい、コンセプトアルバムで、ロック・オペラとも呼ばれている。ピンク・フロイドは、ベースのロジャー・ウォーターズと、ギターのデイブ・ギルモアがツインボーカルを取るバンドだったが、ウォーターズが主導権を握りたがるに従い、バンドには亀裂が入り、この「ザ・ウォール」の後に一枚アルバムを出して、ウォーターズは脱退している。ウォーターズ在籍時最後のアルバムは、ウォーターズのソロアルバムに近い内容で、大ゴケしている。ウォーターズが抜けた後も、ピンク・フロイドは、精力的に活動を続け、以前ほどではないが、ビッグ・ネームに相応しい成功を収めた。ソロになった、ウォーターズが、全くパッとしなかったのとは対照的である。

本作の失敗の最大の原因は、そのウォーターズが制作に大きく関わってしまったこと。DVDについてる制作裏話のおまけ映像でも、バンドからは彼しか出てこないし、アラン・パーカーの存在感は極めて薄い。結局、エゴを剥き出しにしたウォーターズは、バンドという小さなユニットの中ですら機能することが出来なかった。そんな彼がもっと大掛かりな映画のようなプロジェクトでイニシアチブを握っていたら、上手くいくはずがない。

映画も興行的に大失敗したが、これだけのロックオペラの大作をほぼ忠実に映像化した意義は大きい。ピンク・フロイドファン以外には誰にも薦められないけれど、開明獣の極めて個人的なメモリアル・ピースとして満点をつけてみた。なので、全く当てにならない評価ということをご理解いただきたい。

現代人の疎外と孤独を1人のロックスターの立場から描いたロック史上に燦然と輝く名盤は誰にでもオススメしたいが、これはスルーが賢明でしょう。
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