イチロヲ

ピンク・フロイド/ザ・ウォールのイチロヲのレビュー・感想・評価

4.0
ロック・スターとなった青年(ボブ・ゲルドフ)が、プレッシャーを跳ね除けるべくドラッグを常習してしまう。ピンク・フロイドの同名アルバムを映像化している、ヒューマン・ドラマ。アルバムの構想を手掛けたロジャー・ウォーターズの自伝的作品。

「破壊こそロックである!」とは音楽好きのあいだでよく言われている通説だが、本作の主人公の目前には、自力では破壊することのできない壁が立ちふさがってしまう。この場合の破壊のできない壁とは、困難のことではなく「自閉」のこと。

戦争で父を失い、母の過保護な家庭で育てられ、抑圧的な学校で反体制運動に耽り、妻には逃げられ、ドラッグに溺れ、生きる意味を見失ってしまう。そんな、廃人同然となった主人公の姿を、退廃的かつ呪詛的に描写していく。

誰しもが抱えている普遍的な心的外傷が、テーマに取られていることは自明の理。ヴィジュアル面のカッコよさが際立っており、小学校の子供たちが暴動を引き起こすシークエンスにエキサイト必至。
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