Myon

愛を読むひとのMyonのネタバレレビュー・内容・結末

愛を読むひと(2008年製作の映画)
3.2

このレビューはネタバレを含みます

原作は未読。
前半は水気のある映像美に集中。ドイツの陰翳ある街並みと、光の差し込む室内のコントラストが美しい。肌色のシーンはあるけど官能的だとは思わなかった。朗読シーンの方がまだ温度が通っている気がする。

映像から人物の内面を推察しないといけないという意味では難解な映画だ。読まれるのは他人事じみた物語であって、彼らの心ではない。
特に後半は複数の題材が縺れ合っていて、人によって解釈や後味が全然違ってきそう。
個人的には戦争犯罪の被害者への贖罪や内省は要素のひとつに過ぎないのかな、と。主題はむしろ加害者側にのしかかる呵責。人が行うものである限り、戦火に傷付けられたのはドイツ側も例外ではない。ハンディキャップや法というフィルターを通して、それが繊細に、だけど弁解がましくなく表現されていたように思う。

仕方がないとはいえドイツ語でないのと、ミスリードを誘う邦題が残念。
「愛」というわりにはそれぞれ自分の世界を生きる主人公ふたりから温度差、齟齬を感じた。ある意味リアルで人物描写として秀逸だけど、よくあるロマンスを期待して見ると歯痒さを感じてしまうかも。
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