アラサーちゃん

エレベーターを降りて左のアラサーちゃんのレビュー・感想・評価

エレベーターを降りて左(1988年製作の映画)
4.0
マイナーなフランス映画ですが面白かったですよ!
観る価値あり。いわゆるフレンチコメディ、ライトな笑いでおしゃれな雰囲気の悲劇系コメディなので、女子はわりと好きなんじゃないですかね。

血気盛んな夫婦の隣に住む純情な画家。恋い慕っていた人妻とお近づきになり、やっと家に招待するという日に隣の夫婦がとんでもないトラブルを巻き込んできた。
半裸の妻がオートロックのドアが閉まったからと部屋に入り込む。それを見て旦那と人妻は勘違い。勘違いはさらなる勘違いを呼び、騒動は大騒動に発展し、ピストル、人妻の夫、警察官も巻き込んですったもんだ。

とにもかくにもこのおフランスの国民性に尽きると思います。上がったと思えば下がる。とにかく自分大好き。おそらくこの人物像は日本人には真似できないだろう。
「お前も殺して俺も死ぬ!」とシャイニングさながらの気迫で喚き散らしてかと思えば一分後には「パリのはずれに引っ越して三人で暮らそう」と夢を語るように画家の手を握る旦那。
「もう別れる、何もかもおしまいよ」と言い捨てて出て行こうとしたもののショックで死んだような旦那を見るやいなや「彼をこんなズタボロにして許せない!」と画家に掴みかかる妻。
とにかくこのトラブルメーカー夫婦が画家の部屋を戦場に、大戦争を勃発させるわけですが、まあ出ている人もこれなら観ている側もエネルギー量が半端ないです。
愛する人妻もバッチリなくらいにタイミングが悪く、その上ことごとく華麗な勘違い。もはや不運としか言いようのない主人公の画家は言い訳も何もできません。

それでも興ざめするわけでもなく、悲劇の笑劇、クスッと笑えて最後はほっと幸せになれる映画です。
エマニュエル・ベアールもチャーミングかつセクシーで魅力的だし(服装がエロい)旦那役のリシャール・ボーランジェも読めないサド男をバッチリ演じていたと思います。観るたびだいたいこの人こんなへんな役ばっかり。主役は観たことないけど芸人さんとかだろうな。ロベルト・ベニーニみたいな方。
アパートの一室を舞台にする密室劇なところもなかなかセンスがあり、行き来できるベランダ、オートロック式のドア、エレベーターボタン、呼び鈴、アパートのアイテムがどれもこれも効果的に映画を際立たせていていい役しています。