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タレンタイム〜優しい歌のkogureawesomeのレビュー・感想・評価

タレンタイム〜優しい歌(2009年製作の映画)
4.5
最初の30分は特別な映画だとは思わなかった。オールタイムベスト1にあげる人もいるという情報だけは知っていてどんな映画なのだろうと気になっていた。ストーリーについては全く知らずに観ていた。
 30分すぎた頃からだろうか、ハッとさせられた。忘れがたいシーンがいくつもあり、この映画を遺して亡くなった監督のことをいろいろと考えた。

ヤスミン・アフマドは
 6本の映画を監督し、51歳で亡くなった。今年は没後10年目にあたる。母方の祖母は日本人だという。「尊敬している日本人の監督は、まず小津安二郎、今村昌平、伊丹十三、大島渚、山田洋次、最近の監督では、北野武、竹中直人、周防正行、三谷幸喜、小栗康平、東陽一、原田眞人、岩井俊二、それから素晴らしい民話を提供しているスタジオ・ジブリ作品」とインタビューに答えている。また一番好きな映画監督はチャーリー・チャップリン、一番好きな映画は『街の灯』を挙げている。
 女性監督で映画監督としては活動期間6年、マレーシア映画の母と呼ばれている。
マレーシアというのは知っている人からすれば当たり前な話なのだが、(浅学な私は今回初めて知った)マレー系、中華系、インド系と多民族国家で、言語もマレーシア語、英語、中国語、タミル語といくつもの言語が混在していて、さらにイスラム教、仏教、ヒンドゥー教、キリスト教とそれぞれの信者が隣同士で暮らしているらしい。なので偏見、軋轢や摩擦が起こることは避けられない。にもかかわらず、優しさがこの映画にみなぎっていて、圧倒される。

ヤスミン・アフマドの作品は「多様な人々が混在する世界をそのまま肯定し、あらゆる壁を越えていこうとする作風」と言われている。
ただし真面目なだけの深刻な映画ではなく、やたらオナラする登場人物がいたりクスッとした笑いが全編に埋め込まれている。
 この映画が公開された数ヶ月後、監督は亡くなった。


台湾の故エドワード・ヤン監督の映画とは似ていないのだけれど何故かエドワード・ヤンのことを思い出した。
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