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タレンタイム〜優しい歌のKKのレビュー・感想・評価

タレンタイム〜優しい歌(2009年製作の映画)
3.9
人種も言葉もバラバラで、字幕で見てても誰がどの言葉で話してるのか分からない。しかも映画の構造は群集劇。誰と誰が繋がってるのか、イマイチ掴みきれないまま物語が進んでいく。

人間関係が割と不明な上に、多くの登場人物の口が悪く、かなりステレオタイプな発言が多い。
「こんな差別的な表現が多い作品なのに、こんな評価高いのはなんで??」
その疑問は、この作品の背景や他の方のレビューを読んで納得した。

多国籍国家であるマレーシアは、様々な国の人や言葉や文化が入り交じっている。今まで会ったことのない人種や触れたことの無い文化、自分とは違う考え方に出会った時、人はどう変わるべきなのか。

それまでの慣習や考え方に囚われ、新しい社会と向き合うことのできない人は多い。
だが、彼らは自分の凝り固まった価値観と社会の価値観と社会の価値観の相違にいつまで経っても気づけない。

マヘシュの母がまさにそんな価値観を持った人の代表だと思う。家族が1番大事。自分の家族に他の文化が混ざることは認めない。
それで自分の弟や息子が苦しんでいることにも気づかず、自分のエゴに固執している。

自らのエゴのため、弟の幸せ、息子の幸せを奪おうとする彼女は、現代で言う「毒親」に他ならない。まあ、この作品の母親結構口悪くて、毒親に近い人結構出てくるけど笑

そんな「毒親」のエゴに振り回される家族は誰一人として幸せになれない。そしてそのエゴは、その家族と関わった人にも影響してしまう。

マヘシュがムルーの家で寝てしまった翌日、マヘシュは母親になじられ、叩かれる。それを見たムルーと、ムルーの母親はただ涙を流すことしかできなかった。

その時の彼女達の心情はどのようなものだったのだろう。マヘシュとムルーの幸せを願ったばっかりに、マヘシュの母親を苦しめ、マヘシュの家族をバラバラにしてしまった。そんな罪悪感、そしてそれをただ見ていることしかできない無力感を感じていたのではないか。

エゴに囚われた人がいる家族は、とても苦しい。自分の家も割とそんな感じだったから、マヘシュが叩かれてるシーンはかなり辛かった。

マヘシュの母親と対照的?に描かれてるのがムルーの母親とハフィズの母親。口は悪くても最後はちゃんと見守ってくれるムルーの母親と、病気になりながらもずっと息子のことを想うハフィズの母親。

どんな家庭にも「歪み」はあるし、全部が上手くいってる家族なんて多分ない。けど、流石にマヘシュは可哀想すぎる。愛してくれるムルーがいたから救われたけど、それだけでは解決できない家族というか社会の問題がある気がするなぁ。

ハフィズも1番良い奴なのに、1番報われなくて凄く辛い。多分ムルーのこと好きだったのに、マヘシュに譲ったハフィズイケメンすぎる。

ラストはちょっと綺麗にまとめすぎてる気もするけど、あの二人の心情もかなり複雑なんだろうなぁ。2人の心情を想像し始めると、レビューが倍くらいになりそうなので今日はここまで。

この作品で監督が伝えたかったことは1つだけじゃないような気もするし、色んなことを考えさせられる映画だった。


久しぶりに映画観たら、感想が止まらなくなった笑 やっぱ人生に映画は必要だ。
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