ベイビー

タレンタイム〜優しい歌のベイビーのレビュー・感想・評価

タレンタイム〜優しい歌(2009年製作の映画)
4.3
新年明けましておめでとうございます

さて、本年一本目の今作品は、以前から観たいと思いずっと寝かせておいたもの。フォロイーさんのレビューを読んだ時に“きっと素敵な作品なんだろうな〜”と前々から思っていたので、新年のスタートを飾る作品として観てみました。


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体育館に照明が点けられるシーンから始まり、同じ画角で照明が消えて物語は終わって行く…

“慈悲あまねく慈愛深きアッラーの御名において”

冒頭に出てきたこの言葉のとおり、物語はムルーとマヘシュの恋を中心に、人生に迷いながら正しい道を歩もうとする人たちの群像劇となっています。

因みに少し調べてみたのですが、「慈悲あまねく」と「慈悲深き」にはそれぞれにそれなりの意味があり、クルアーン(コーラン)の用語解説書を見ると、「慈悲あまねき」とは「アッ=ラフマーン:慈悲が広い」ということで、“至高なるアッラー以外に属することはない”。とあるそうです。

それから「慈悲深き」とは「アッ=ラヒーム」と言うそうで、“慈悲が途切れなく常であり、壮大であること”という意味とのこと。

上手く意味を掴めませんが、まとめて言うと、アッ=ラフマーンは森羅万象に対する慈悲者、アッ=ラヒームは信仰者に関わる慈悲者、という理解が正しいそうです。

本作を観ていて正直日本人では分かりづらい人種の壁や宗教観などの問題も見受けられましたが、それでも根本で描かれているのは普遍的な人生のあり方ではないでしょうか…

“月は朝にとどまり輝くのに、なぜ太陽は夜を照らさぬ?”

悲しみや苦しみはいつまでも残像として心に残るのに、何故幸せは闇に隠れてしまうのだろう?

人は人を妬み、怒り、嫌い、蔑むもの。それと同時に人の死を悼み、嘆き、苦しみ、そして時に人は人を愛し、ずっと寄り添いたいと願うもの。

人生とは、自分の人生が裏返るような人との出会いもあれば、自分の一部が引き裂かれるような別れもあります。そんな出会いと別れの間にも、さまざまな感情が生まれます。

この作品はそんな感情を上手く歌に乗せて伝えてくれました。踊らないミュージカルというのでしょうか。「タレンタイム」という学校行事を絡ませながら、登場人物たちの感情が音楽に乗って優しく伝わって来るんです。本当に素晴らしい演出だと思います。

あと、温かみのあるフィルム映像が素晴らしいですね。ところどころで映し出される自然の美しさは、作品全体から滲み出る優しさを彩っているようで、音楽との調和は最高のバランスでした。そして緩い下ネタの数々は程よいスパイスになっていましたね。

本当、僕好みな作品でした。観れて良かったです。フォロイーさんたちが教えてくれなかったら、この作品と出会えてなかったんだろうな〜。

ということで、また皆様のレビューを拝読させていただき、今作のような素敵な作品との出会いを期待しておりますので、本年もどうぞ宜しくお願いいたします。
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